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イチロー選手に学ぶこと

先ごろ1シーズン最多安打の大記録を作ったマリナーズのイチローのインタビューを中心とした特集番組を見た。80年前にジョージ・シスラーが打ち立てた記録を塗り替えたのだ。

イチローはアメリカ人の野球観を変えたといわれる。豪快なホームランを連発することだけが野球じゃないことを教えてくれたのだ。

確かにホームラン・バッターはいつの時代もヒーローだ。ホームラン王ベーブ・ルースなら僕も伝記を読んだことがあった。でもベーブ・ルースの陰に隠れて、同時代にシスラーという大選手がいたことを、どのくらいのひとが憶えていたのだろうか。イチローは埋もれてきた歴史に光を当てた。それに、ゴジラ・松井が所属するヤンキースは今シーズン地区優勝を果たしたが、イチローのマリナーズは最下位だっけ?とにかく不振だった。なのに、他のチームのファンまでがイチローを応援した。

ホームランを連発するのでもなく、チームが優勝するでもなく、それでもイチローは敵地でもスタンディング・オベーションで賞賛を受けた。ベーブ・ルース的なヒーロー像とは違う価値観で、人々の野球を見る角度を変えたのだ。

彼が日本プロ野球を離れて渡米する前、ピッチャーにバットを尽きだして袖をまくる独特のバッティングスタイルは「挑発しているように見えるから止めた方が良い」といわれたらしい。それでも、彼は自分のスタイルを変えなかった。そしていま、アメリカ中の野球少年が彼のスタイルをまねている。

何か彼には、周囲の波風に翻弄されずに自分の理想を追求する精神的な強さを感じる。若くて無表情な顔立ちのせいか、ちょっと気取って生意気にも見える。試合結果がどんなものでも気持ちよくインタビューに応じる松井秀喜は立派だし、新庄剛のようなスター選手も貴重だ。そういう魅力には乏しいけれど、でもイチローはホンモノのプロなのだ。サッカーの中田英寿あたりもちょっと近いかもしれない。

公募展や著名な美術団体の展覧会では、100号200号の大作が当たり前だ。大作を描くための集中力やエネルギーは確かにすごいもんだろう。でも、やたら大きな絵がだけが良い絵という訳じゃないだろうと考えている僕にとっては、イチローのような存在はすごく親近感を感じる。ヒーローってのはどんな分野のひとでも、ひとに元気を与えてくれる存在だ。

僕もまた自信を持って自分のスタイルで描き続けたら、絵の常識を変えていけるんだろうかなんて、すごく大きなことを思ったりする。「それとこれとはかんけーねーだろ!」と自分でもつっこみながらではあるけれど。
by celtcelt | 2004-10-16 22:31 | 展覧会情報

"empty colours"雑記帳


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